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建寿御前日記 第九段 「桜の花瓶」 [【建寿御前日記(本)】]

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【第九段 本文】

その夜はいでて、四月にぞ参りし。きさきの御ほどは、まして、何事も、いつかしく、よそほしき事のみ、かぎりもなけれど、幼く、いふかひなき心を、いとどおひらかに、さかしからず、見るべきことをも見ず、こゑも聞こえじとのみ思ひしかば、何事をかは見およばん。昼の御座の御帳のまへに、つくりたる八重桜の、ひとまにはあまるばかりなるを、るりのかめに、たてられたりしを、きさきの昼の御座には、かかることのあるにやと、思ひしもおこがまし。

【訳】

その夜は退出して、四月に(再度)参上した。后の格式というものは、言うまでもなく、何事も、厳めしく、威儀を整えていることはただもう限りないが、幼くぼんやりしている心を、ますます鷹揚に、小賢しくないように(謹んでいたので)、当然見るはずのことをも見ず、声も聞こえまいとばかり思ったので、何事を見及ぶことが出来たであろうか(みんな見過ごしてしまった)。

(ただ、覚えていることといったら)昼の御座所の御帳台の前に、造花の八重桜で一間に余るくらいの大きさのものが、青磁の花瓶に立てられているのを(見て)、后の昼の御座所には、こんなこともあるのだと思ったのも(考えたら)差し出がましいことである。

※一間・・・寝殿造りの柱と柱の間くらいの長さ。
※青磁・・・一般的には緑がかった青色。

【コメント】

今回は短めでした。
書いてあることといっては、后の昼の御座所の前には青磁のつぼに入った造花の八重桜があるということだけです。
青磁は古代中国に始まった陶磁器で、この時代の中国・南宋で最盛期を迎えていました。
一間あまりの桜を入れるんですから、かなり大きなものですよね。
今あったらいくらするんでしょう。見当もつきません。

後、造花を作っていたっていうのがちょっと面白かったです。
昔は造花より生花の方が多く使われているイメージですが、このような記述があるってことは結構造花も使われてたんでしょうか。
そういえば、かぐや姫に蓬莱の玉の枝を求められた車持皇子が職人に命じて贋物を作らせる話もありましたし、造花も結構あったのかもしれませんね。

★前回の「清盛」視聴率微増でちょっとほっとしてます。
NHKだから視聴率悪くても打ち切りにはならないんでしょうけど、あんまり視聴率悪いと現場のやる気がなくなってドラマの質が低下したらやだなーと思って。

先週、美福門院得子さまが後白河帝のところにやってきて、双六をしながら「天下の覇権を握れるなどとゆめゆめお考えなさるな」って釘を刺したのが恐面白かったです。
得子さまは次の帝の守仁親王(後の二条天皇)を養子にして抱き込んでるから、守仁親王に天皇親政を行わせて実質自分が政治を牛耳ろうってことですよね。
保元の乱が終わったばかりだというのに、もう次の権力闘争の幕開けです。
得子さまにメンチを切られた後白河帝は「ぞくぞくするのう、朕は生きておる」と、一寸先も分からない権力闘争に生を実感しているようでした。

歴史物のいいところであり、悪いところであるのは、今後得子さま、守仁親王、後白河天皇がどうなるか、もう分かっちゃってるところです。
知らなければもっともっとのめりこめるのに。
かといって、歴史をあんまり捻じ曲げてドラマを作られちゃうとそれはそれで興ざめだから難しいところですよね。

【建寿門院日記(本)】・・・青磁の花瓶がやたら大きそう。


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kontenten

昨晩の歴史秘話ヒストリアは熊野の話でしたが、その熊野詣の話で
得子さんと、璋子さんの解説があり、少しですが謎が解けてきました。
やはり、大河だけの情報では理解が難しいと思いました^^;Aアセアセ
by kontenten (2012-06-07 09:26) 

ヨンタロー♀

造花って素材はなんだったのでしょう?
和紙とかかなぁ?
なんかすっごい知りたくなってきました。
by ヨンタロー♀ (2012-06-07 22:49) 

mito_and_tanu

猫ぶろぐなのに猫がないニャ。いい子のこちまを載せるのニャ。 ってこちま君が言ってますよ。
by mito_and_tanu (2012-06-08 00:11) 

ぴー太郎

こんばんは♪
造花って、いったいどんな代物なのでしょうね。興味湧いてきますね。
アートとしてとか、なにか特別の用途としてあえて造花なのか?なんで
生花じゃないのかしら?とかいろいろ気になってきます。
私もものすごく知りたくなってきました♪
by ぴー太郎 (2012-06-09 00:11) 

nakonako

みなさん、nice&コメントありがとうございます。

kontentenさん、
そうでうよね。熊野詣も白河院に続き鳥羽院も何回も行ってるんですが、ドラマではそんなに触れられてなかったですよね。
多分ロケが大変だからだと思いますが。
摂関家のエピソードもかなり削られててちょっと残念です。

ヨンタローさん、
素材はなんだったんでしょうねー。
昔は紙も結構高価ですし、意外と布かもしれませんね。
有職故実の本とか読むと載っているのかもしれません。
ただ、ここは宮中じゃないので、しっかりした決め事にのっとって飾っているものではないかもしれませんが。

mito&tanuさん、
今ちゃむ君が机の上に乗って、こちらを見ています。
可愛いのでなでなでしちゃいました♪
こちま君は2年ほど漢方薬を飲ませた効果が出て、健康になりました。
御顔もスッキリで可愛いですよ。
今度見に来てください。

ぴー太郎さん、
ホントに気になりますよね~。
舞を舞うときに頭に花を飾るのですが、それも造花がよく使われたそうなので、結構造花はあったみたいです。
昔だったら生花の方が安そうですよね。
古典って一寸したことで分からないことが沢山あるから楽しいですよね。
by nakonako (2012-06-09 23:44) 

溺愛猫的女人

こんばんは

細工の素晴らしい豪奢な造花だったのでしょうね。
確かかぐや姫でも、無理難題の求婚者への要求に、細工物を作らせたというのがあったような気がします。
平安の世から、こうした細工物は多く作られていたのでしょうか?

by 溺愛猫的女人 (2012-06-11 22:47) 

nakonako

溺愛さん、
細工がどこまで発達していたのかよく分からないのですが、髪にかざす造花は一般的だったみたいですよ。
当時は生花の方が安上がりだから、造花→お金持ち!ってことなのかも。
車持皇子はホントお気の毒ですよね(笑)
それにしてもあの職人たちは浅慮です。皇子に恥をかかせたら復讐されるのが分かりきってるのにね。
by nakonako (2012-06-12 19:00) 

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